1 広告媒体が信用されないのは「世代の仕様」が変わったから

若い女性が求人広告を疑うようになったのは、 単なる性格でも感覚でもなく「世代の標準仕様」です。

TikTok・X・Instagramで育った世代にとって 広告は最初からこう認識されています。

求人媒体に 35万〜 と書いてあっても 「どうせ盛っている」「条件全部は書いてない」と読む。 これは感覚ではなく日々の情報環境から学習された防衛本能です。

2 媒体は「店が自分をよく見せる場所」だと理解されている

ホストクラブのInstagramがどれだけキラキラしていても それだけで信用されないのと同じように 求人媒体もまた「店が作った情報」にすぎません。

若い女性はすでにこう理解しています。

• 媒体は店側が掲載料を払っている場所
• 良いところだけ切り取られている
• 第三者の声ではない以上鵜呑みにはしないほうが安全
• 仕事の詳細が記載されていない

そのため媒体の価値は年々相対的に下がっています。 求人情報は必ず

• SNSでの口コミ
• 個人の体験談
• Google検索結果
• 匿名掲示板での評価

を挟んで検証されるのが当たり前になりました。

3 応募が来ない理由は「疑っている」ではなく「見ていない」

現場からよく聞こえる声が 「最近の若い子は媒体を信用してくれない」というものですが 実際にはもっと厳しい現実があります。

10代〜20代の情報ルートはおおよそこうです。

• InstagramやTikTokで雰囲気を知る
• Xや検索でリアルな評判を確かめる
• 友人や匿名掲示板の情報を参考にする
• それでも不安ならさらに深掘りしてから応募する

つまり媒体は「最初に見る場所」から外れました。 まず媒体を見るのは今や三十代以降の行動パターンです。 応募がないのは「信頼されていない」以前に 「生活圏の外にあるメディアになってしまった」ことが大きいのです。

4 媒体経由は a店・b店・c店 の比較ゲームになるだけ

それでも媒体を見た人はどんな基準で店を選ぶのでしょうか。 ほとんどの場合こうなります。

• どこがまだマシか
• どこが地雷少なそうか
• どこが嘘少なそうか
• どこがいちばん透明度高そうか

つまり「ここで働きたい」ではなく 「どこがマシか」という発想です。

同一フォーマットで並ぶ媒体では 世界観や価値観ではなく 「嘘が少なそうかどうか」だけが差別化ポイントになります。

その結果どの店も似たような表現で盛り始めると 全員まとめて信用が落ちるという悪循環が起こります。

5 今後は必ず必要になる「別ルート」

この状況は一時的なものではなく構造変化です。 これからの採用導線はほぼ次のような評価になります。

つまり

• 店の情報発信 ＝ 信用の源泉
• 発信の上手さ ＝ 採用力
• サイトの構造 ＝ 店の透明性そのもの

という時代になっています。 広告はすでに「あると便利なオプション」であって 「採用のメインエンジン」ではありません。

6 まだバニラを信じている人が見落としているもの

それでもなおバニラなどの媒体に 強い信頼を置いている経営者も少なくありません。

厳しめに言えばそれはただひとつ 時代の変化を見ていないということです。

今の若い世代は

• 広告を信じない
• 媒体が「店が金を払って載せている場所」だと分かっている
• 口コミ・SNS・検索の情報を優先する

その前提を無視して 媒体だけに投資し続けても 5年前に終わったゲームを続けているのと同じです。

7 これからの採用は「発信力 × 透明性 × 世界観」で決まる

求人が来ない店の多くは 景気や人材不足のせいにしたくなりますが、 実際には構造の問題であることがほとんどです。

これからの採用で重要になるのは 次の三つの掛け算です。

• 発信力 店の考え方や現場の空気を自分の言葉で継続的に発信できているか
• 透明性 条件・安全性・働き方について曖昧さを残さず出せているか
• 世界観 その店で働く意味やストーリーが他と明確に違っているか

オウンドメディアやブログSNS運用に本気で取り組んでいる店は すでにこの流れと完全に一致しており 媒体依存を抜ける準備ができています。

一方で広告だけを信じ続けている店は 採用市場からゆっくりと後退していきます。